カリテ

《シア・バター》

セネガルでは、「カリテ」という言葉は、木自体を示すと同時に「シア・バター」も意味する。

カリテの果実は、美味しい果肉+殻+種子+仁(胚と胚乳)で構成されている。

果肉にある堅い殻の中にシアナッツと呼ばれる種子があり、その中の植物性脂肪を含む胚乳(シアカーネル)からシア・バターが作られる。

シア・バターを作る胚乳には、45~55%の脂肪と9%のたんぱく質が含まれている。

シア・バターは、常温ではオリーブオイルのように液体ではなく固形であるが、肌に塗ると体温で溶けて浸透するため、植物性油脂であっても「オイル」ではなく、「バター」と称される。ココアバターも同じ理由で、「バター」と称される。

アフリカでは、シア・バターは数千年前から使用され、食用、薬品(皮膚病の薬など)、化粧品(肌用のクリームなど)、また燃料として使われていた。

長い間、アフリカ女性の唯一の化粧品で、多くの民族から貴重なクリームとして愛用されていた。

シア・バターの大量生産は、かつて、バンバラ王国とその周辺の国々で行われていたが、それはアフリカにおける最初の産業で、国内商業の主要な産物の1つとなっていた。未精製のシア・バターは、食用油脂としてすでにアフリカ各国で流通していた。

現在、シア・バターは主に、ナイジェリア、マリ、ブルキナファソ、ガーナ、コートジボワールで生産されている。

年間1ヘクタールにつき9~17トンの果実の収穫が可能である。50kgの果実から、20kgの乾燥した種子が取れ、4kgのシア・バターができる。

果実1kgから150から300粒ほどの種子が取れる。

シアの木は30年たったら結実し、15~30kgの果実が採れる。そこから約6kgの種子が採れ、2kgのシア・バターが作られる。種子の全量の50%のシア・バターができると言われている。

10kgの種子を使って1日作業すると、2.5kgのシア・バターを作ることができる。最近できた圧搾機を使うと、10kgの種子から1時間で6kgのシア・バターを作ることができる。

現在、1年間で約2トンのシア・バターが製造されている。

未精製シア・バターと精製シア・バターの違い

=未精製シア・バター=

化学薬品を一切使用せずに、「圧搾法」で自然に抽出する伝統的製法でつくる。

色はうすい黄緑がかったベージュで、自然のままの色。ほんのり茶色がかっているもの、クリーム色をしているものもある。

青っぽいさわやかな香りがする。

有用な不鹸化物がたっぷり含まれていて、微量成分が丸ごと残っている。これが美容や保湿に役立っている。

融点は、35~37℃程度で、人肌で溶け、すっと肌になじむ。浸透性があり、油脂のわりにさらっとした使い心地。

塩を加えなくても1年間保存できる。

=精製シア・バター=

溶剤を加えて脱色精製をしたものは色が真っ白。

匂いはない

精製されると融点が2~3℃高くなり、39℃くらいになる。

含まれる不鹸化物の量はずっと減る。

シア・バターは常温では固体であるが、温度が34℃以上になると液体油になる(バターの色はクリームホワイトからクリームイエローに変わる)。

最初から液状にするには、シア・バターを作る過程で、冷却時にレモンの皮を入れたり、ココナッツオイルを加えたりする。

未精製のシア・バターは、古くから食用油脂として国内で流通していた。1960年代になって、ヨーロッパへ種子の輸出が始まり、海外市場が誕生した。主な購入国は、デンマーク、オランダ、イギリス、スウェーデンなどで、チョコレートの製造に、ココアバターの代用品の使用を許可している国である。種子は輸出先の油脂メーカーで精製シア・バターに加工され、代用ココアバターとして使用されている。

シア・バターの質は産地の気候、種子の質・保存方法(種の発芽を妨げること)およびバターの製造方法によって変わってくる。

現在、国際的な質の標準が存在していないため、シア・バターを製造する工場などが独自の基準値を設けている。

シア・バターの製品化

シア・バターは探検家のマンゴ・パークによって初めてヨーロッパに紹介されたが、実際にヨーロッパにお目見えしたのは、1905年、フランスのマルセイユで開催された植民地博覧会のことであった。その後、安い食用バターを製造するため、カリテの種子はヨーロッパに輸出された。また、キズを治す治癒力に注目し、化粧品分野にまで広がってゆき、オランダやデンマークには大規模な精製工場ができた。

基本的に、良質のものは化粧用のクリームに用いられ、若干質が劣るものはせっけんに用いられる。

ロレアル、ザ・ボディショップ、ロクシタンなどが、シア・バターの保湿力や微量成分の効能に着目し、高級化粧品として製品化され広く知られるようになった。

シア・バターに関し、ロクシタンの有名なエピソードがある。

《若かりし頃、世界中を旅していたロクシタンの創業者オリビエ・ボーサン。1980年のアフリカ滞在中、フランスへの帰国便が大幅に遅れた空港で、同じく足止めをされていたベルギー人ジャーナリストの女性とのふとした会話から、「女性しか触れることのできない神聖な木、シア」の存在を初めて知ります。
西アフリカのブルキナファソに暮らす女性たちは、シア・バターを生産することで生活を支えている…。その話に運命的なひらめきを感じた彼は、帰国便をキャンセル。ブルキナファソの村へと向かったのです》(ロクシタンのホームページより)

一方、ザ・ボディソープは、生産者と直接コミュニティトレードを行い、社会への貢献に力を入れている。

《シア・バターの取引開始から25年、当時50名だったメンバーは、11の村からなる640人の組織に成長し、ソーシャルプレミアム(社会的推奨金)により医療や衛生環境の整備、清潔な水の提供、教育など年間49,000人に利益をもたらしています》(ザ・ボディソープのホームページより)

ジェトロが日本企業と組んでシア・バターを高品質の石鹸として現地生産できるよう、日本人専門家を派遣し、現地の女性グループへ石鹸製造の技術指導を行った。日本ですでにこの石鹸が販売されている。

ダカールの庶民は主にマリ産の未精製シア・バターを、ダカール駅の近くの道端や市場で購入している。値段は1kg 1,000 ~2,000FCFA (2021年9月現在約200~400円)。

ダカール駅の近くの道端でシア・バターを売るおばさん
マリ産のシア・バター。
精製されていないため色が黄色

シア・バターの成分

シア・バターは脂肪酸の成分で構成され、そのほとんどが、ステアリン酸とオレイン酸。

ステアリン酸は人の皮膚の皮脂によく似た成分で、肌になじみが良く、酸化しにくく、抗酸化作用がある。乾燥から肌を守るので保湿に適した成分。

オレイン酸は皮膚への刺激の少ない油脂で他の油脂と比較して酸化しにくい。

また、不鹸化性物質やトコフェロール(ビタミンEの本体をなす物質)が比較的多く含まれているため、油と脂肪が安定化し、保存料なしに長期に保存できる。

皮膚にとって有用な成分が多く含まれていると考えられる不鹸化物は、シア・バターに1.7%~15%と大変多く含まれている。一般的に、植物油脂には、1.5%位で、多くとも3%以下である。

これだけの高レベルで残る不鹸化物は世界の植物でもカリテだけである。例えば、アボカドは2%~6%、大豆は0.5%~1.5%である。

尚、成分は、カリテの種類、生育していた地理的特性、果実の熟成度合いによって変わってくる。

2件のコメント

シアバターの木初めて見ました。(写真ですが)。これからもいろいろな木を紹介してください。

コメントありがとうございます。
日本には無い、珍しい木を紹介してゆきます。御期待ください。
今後とも引き続きフォローをお願いいたします。

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