セネガルの現代美術 1/5

セリンニュ・ンバイ・カマラ  Sérigne M’Baye CAMARA

1948年、サン・ルイに生まれる。

国立美術学校(Ecole Nationale des Beaux-Arts)卒業。

国立美術学校教授。造形美術部長。

美術学校の彼の執務室に入ると、まず言われた事が、

「カーボ・ヴェルデのお酒をもらったので、一緒に飲もう」だった。

筆者はお酒には強くないが、お付き合いとしてグラス一杯だけ頂いた。

ウォッカのような強いお酒だった。

こんなゆるい感じの雰囲気の中で彼とのインタビューが始まった。

筆者:作品は大変ユニークですが、どのようにしてこのような作品をつくるのに至ったのですか?

カマラ:最初は具象画を描いていましたが、その後、街などで拾い集めてきた木材と鉄で作品を作り始めました。布、鉄、木材、家具などの素材は、常に進化し変化しています。素材を使用していた人の形跡や人生の形跡を素材の中に探し、そこに新たな生命を吹き込むことに感動を覚えたのです。

筆者:あなたの作品のテーマは何ですか?

カマラ:人間です。男、女、子供は、他の人たちとの出会いを求めています。人間との出会い。家族との出会い。彼らは、水平線や朝の光を眺めながら歩き、未来に向かって旅立ってゆきます。

筆者:作品はどのように作られるのですか?

カマラ:自分を取りまく環境の中で、インスピレーションを受け、作品の人物が創り出されます。人物は、錆びた鉄を切断し、磨き、折り曲げ、幾何学的に組み立てられ、創られてゆきます。すると、人物は呼吸を始め、動きと命が生まれるのです。それは、暗闇に走る稲妻のように視覚の空間が浮かび上がります。

ここまで話した時、彼は突然、執務室の隅においてあった伝統楽器のコラを取り出し、弾き始めた。

彼によると、コラの名手、ラミン・コンテからコラを習っているそうだ。(正直な感想、まだあまり上手ではなかった)

下の写真は、『セネガル女性』という題名で、絵画の中の人物を立体化した最初の作品。カマラの代表的な作品。

『セネガル女性』

尚、彼の作品は野外に展示されるものが多いので、彼の執務室には作品が無く、写真を撮ることができなかった。作品はカタログなどから転載した。

『家族』

『夢想 Ⅱ』
(CIMAISEより転載)

『Jaques Kerchache』
(Dak’Art 96 より転載)

ジャーナリスト、ジェイ氏A.B.Dièyeとの対談

ジェイ:一般的に、絵画はなぜ彫刻より成功したと思いますか?

カマラ:スペースの問題だと思います。美術品を買いたいと思っている人は、絵画の方が、彫刻より飾る場所のスペースが少なくて済むと考えています。彫刻家は、それを分かってきたので、作品をどんどん最小化していると思います。

ジェイ:セネガル人の彫刻家はなぜ、材料に木を選ぶのでしょうか?

カマラ:木は扱いやすい材料だからです。石などは特殊な道具が必要となり、やっかいです。

ジェイ:なぜセネガル人彫刻家が少ないと思いますか?

カマラ:美術学校の学生たちは、彫刻に興味は持っています。リサイクルの材料を使った彫刻に関心があるようです。

ジェイ:なぜ、リサイクルの材料を使った彫刻に関心があるのでしょうか?

カマラ:セネガルでは、古典的な彫刻を製作するには、材料の調達の問題があるからです。リサイクルの材料を使った方がポジティフな結果が得られます。しかし、今、嘆かわしいのは、《芸術》を追及することよりも、《リサイクルの材料》自体を重要視していることです

ジェイ:彫刻を教える過程で、伝統とぶつかり合うことはないですか?

カマラ彫刻というものは、ただ単に作ることではなく、《考え》を表現することです。その《考え》は普遍的なものですから、伝統と現代はぶつかり合うことはなく、それらを区別する意味もないと思います。

ジェイ:セネガル人のアーティストで誰の作品が好きですか?

カマラ:イブラヒム・ケべIbrahima Kébéやビエ・ディバVié Divaやムスタファ・ディメMustapha Diméの作品が好きです。

《参考文献・Webサイト》

・『L’Art africain』Frank WILLETT  (Collection L’UNIVERS DE L’ART 10)

・『Afrique Secrète』Christiane Falgayrettes-Leveau  (Musée Dapper)

・『Arts premiers』Marine Degli et Marie Mauzé (Découvertes Gallimard/Réunion des Musées Nationaux Arts)

・『L’art africain』Etienne Féau et Hélène Joubert (Editions Scala)

・『Emblème du pouvoir』Collection Mourtala Diop

・『ART CONTEMPORAIN DU SENEGAL』Ministère des affaires culturelles, Musée du Québec

・『Le Musée de Dakar』Sépia

・『Manufactures Sénégalaises des Arts Décoratifs』Les Nouvelles éditions africaines Dakar-Abidjan

・『Arts Plastiques et Etat au Sénégal』Abdou SYLLA Dakar

・『A la croisée des chemins : rencontres entre André Malraux et l’art africain libérateur』Amitié Internationale André Malraux

・『Le festival des arts nègres de 1966』Le Monde Diplomatique Juin 1965 

・『マルローと世界美術史の構想』稲賀 繁美

・『アフリカの心とかたち』川田順三 岩崎美術社 

・『セネガルとカーボベルデを知るための60章《33 セネガルの美術 : 川口幸也》』小川 了 (明石書店)

・『Dictionnaire de l’Académie française

・『セネガルの現代造形美術-状況と展望』アブドゥ・シィラ (インサイド・ストーリー同時代のアフリカ美術』展カタログ 美術館連絡協議会)

・『レオポルド・セダール・サンゴールにおけるネグリチュードと芸術』柳沢史明

・『Saint-Exupéry Oeuvres complètes 』Bibliothèque de la Pléiade

・『Manufactures Sénégalaises des Arts Décoratifs depuis 1966』

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