クスクス料理

《軽食・おやつ》

フォンデ Fondé

サイズが5mmくらいの大粒タイプのクスクス「アラウAraw」を茹でて使用する。

元々はバンバラ族の食べ物で、夕食や朝食として食べる。

よく煮込んだアラウに、フレッシュ・チーズ、牛乳、凝乳(Lait caillé)などの乳製品を加え、熱いうちに食べる。

一般的に、ラーハは砂糖を入れないが、フォンデには好みに応じて砂糖を加える。

バニラエッセンス、オレンジの花のエッセンス、ナツメグを加え香りを良くする。

凝乳(Lait caillé)の酸味とアラウの香ばしい味とのコンビネーションが感動的。

アラウを茹でる。
よく混ぜる。

レモン汁少々を加える。
凝乳(Lait caillé)を加える。

ルイ  Ruy

「ルイ」は、ウォロフ語で「溶かす」という意味。

トウジンビエの粉粒を、蒸し器に通さないで、まず水(または牛乳)に溶かし、そして熱湯に入れて煮込む。比較的軽めのおかゆ。

出産後の母親や、赤ちゃんが離乳食として食べる。

慣習的に、セネガルの女性は出産後45日間、何もしなくてもよいことになっている。出産後は、塩分を控えた食事を1人だけで食べる。

ラーハ Laax

Laaxは、ウォロフ語で「雑穀のおかゆ」を意味する。

スングフSunguf の粉で作った大粒のクスクス「アラウAraw」またはサンカルSanqal(杵で搗き、ふすまを除去してから、ふるいにかけた粗びきの穀粒)を使用する。
(サンカルの方が消化が早いと言われている)。蒸し器には通さない。

通常、夕食または朝食、時にしておやつ(ンジョガナルNjoganal)として食べる。

伝統的な食べ物で消化に良い。

田舎では、搗きたてのトウジンビエをどろどろになるまで煮込み、搾りたての牛乳をかけて食べる、お百姓さんたちの朝食。

搗きたての粉粒が大変香ばしい。どこか癒される甘みがある。きな粉に牛乳を溶かしたような味。温かいオートミール。

犠牲祭(タバスキTabaski)や断食明けの祝日(コリテKorité)の朝、イスラム教徒はモスクにお祈りに行く。お祈りが終わって帰宅してから食べるのがラーハ。赤ちゃんの命名式(ンゲンテNgente)の際、招待客に配られる。

各家庭によって違うが、凝乳(lait caillé)、コンデンスミルク、バニラエッセンス、オレンジの花のエッセンス、木の香りがするナツメグなどを好みに応じて加える。

砂糖の代わりに蜂蜜を入れることもある。

凝乳(Lait caillé)を売る田舎の女性。

ラーフ・ソウ Laaxu soow

ラーハ(雑穀のおかゆ)に凝乳(Lait caillé)を混ぜたもの。

ラーフ・ヌトゥリ Laaxu nëteri

ラーハに、ンガラーハのソース(バオバブの果肉の煮汁に落花生のペーストを加えたソース)をかけたもの。このソースをヌトゥリという。

バニラエッセンス、オレンジの花のエッセンス、ナツメグを加え香りを良くする。

ラーハに干しブドウを加え、ソース・ヌテリとよく混ぜて食べる。

ンガラ-ハ Ngallax

サイズが2~3mmの中粒タイプのクスクス「チャクリ」を蒸して使用する。

バオバブの果肉(ブイBouye)の煮汁に落花生のペースト、チョコレートを加えたソースを、クスクスに混ぜて食べる。

バオバブの果実

村で売られているバオバブの果実

バオバブの果肉

市場で売られているバオバブの果肉

果肉を茹でる。
果肉の中の種を取り除く。
落花生のペーストを加える。

バニラエッセンス、オレンジの花のエッセンス、ナツメグなどを加え、ソースの香りを良くする。

好みに応じてチョコレートを入れる。

クスクスに干しブドウを加え、ソースとよく混ぜてから、数時間冷蔵庫に入れて冷やす。

リッチな落花生ペーストの味と、バオバブの果肉の煮汁の甘酸っぱい味の組み合わせが意外だが、それがみごとに調和している。

バオバブの果肉の煮汁には、ビタミンC、ミネラル、食物繊維が多く含まれている。

セネガルのカトリック教徒は年に一度40日間の断食を行い、復活祭(イースター)の前日に終了するが、キリストが十字架に架けられた聖金曜日から復活祭までの間に、ンガラーハを大きな洗面器にいっぱい作る。これを復活祭の当日に、近所の人や会社の同僚、とりわけイスラム教徒の人達に配り、分かち合う。その行いはイスラム教徒との共生、友愛のシンボルとなり、社会的な結びつきを強めている。

古くから食べられている伝統的な食べ物。

チャクリ Ciakry

サイズが2~3mmの中粒タイプのクスクス「チャクリ」を蒸して使用する。

チャクリは「デザート」という意味もある。

ソウSowと呼ばれるソースをクスクスに混ぜて食べるが、最初は別々に準備する。

ウォロフ語のソウは一般的に、「凝乳Lait caillé」を意味するが、チャクリの場合は「牛乳、フレッシュ・チーズ、ヨーグルト、生クリーム、コンデンスミルクなどの乳製品を用いたソース」を示す。(材料は各家庭によって異なる)

バニラエッセンスとオレンジの花のエッセンスを加えるとソースの香りが良くなる。ナツメグをすりおろして入れることもある。

牛乳
バニラエッセンス
オレンジの花のエッセンス

コンデンスミルク
ナツメグ

ソースは出来上がったら冷蔵庫に入れて冷やすが、クスクスは干しブドウを混ぜ、常温にしておく。(クスクスを冷蔵庫に入れて冷やすと、粒が固くなり、歯ごたえが悪くなる)

食べる寸前にソースを冷蔵庫から出し、すぐにクスクスをと混ぜて食べる。

クスクスの独特な歯ごたえと、ソースのデリケートな甘さとのシンフォニーが秀逸。きな粉を酸っぱいヨーグルトで食べている感じ。オレンジの花のエッセンスは日本人にはちょっときついかも。冷たい状態で食べるとおいしい。

食物繊維、たんぱく質、ビタミンBが豊富に含まれている。

エネルギーを増加し、疲労回復を助ける。

朝食、おやつ、夕食と、日常的に食べられているが、お祝い事に必ず食べる伝統的デザート。

イスラム教徒は、断食の月の日没後に、その日初めて摂る食事イフタール(ンドグNdogou)としてチャクリを食べる。

フォンデ(Fondé)やルイ(Ruy)用のチェレには、小さな粒状にした後、蒸し器に通さないチェレを使う。

チェレ・アク・メーウ Cere ak meew

チェレ
メーウ(牛乳)

サイズが1mmくらいの小粒タイプのクスクス「チェレ」に牛乳をかけて食べる。

好みに応じて砂糖を加える。

小腹が減った時に、おやつまたは夜食として食べる。

チェレ・アク・ソウ Cere ak soow

チェレ・アク・ソウ

サイズが1mmくらいの小粒タイプのクスクス「チェレ」に凝乳(Lait caillé)をかけて食べる。(中粒タイプのクスクス「チャクリ」を用いることもある)

好みに応じて砂糖を加える。

バニラエッセンスとオレンジの花のエッセンスを加えて香りをよくする。

WoggウォッグまたはスーソルSuusol

ウォッグ

小粒の「チェレ」に、落花生、砂糖、はちみつを混ぜて固めた甘い伝統的お菓子。

ウォッグはウォロフ語で、「かたまり」と言う意味。

筆者は地方に取材に行く時、セットプラス7Places(長距離相乗りタクシー)を利用していた。道中、車の中では必ずこのお菓子が前の方から回って来た。子供連れのお母さんやおばあさんは自分だけで食べないで、車内の他の乗客たちにもおすそ分けしてくれるのだ。筆者もお返しに、日本から持って来た旅のお供の《都こんぶ》を回したら、意外と好評だった。笑

筆者がアルジェリアにいた時、事務所の女性アシスタントのお母さんが作ってくれた、ルフィスR’fissというお菓子を食べたことがある。クスクスをハチミツで固めたお菓子で、中にナツメヤシのペーストが入っている。セネガルのウォッグには、ナツメヤシの代わりに、「落花生」を入れているところに、⦅セネガルらしさ⦆が感じられる。

アルジェリアのお菓子ルフィス

ルフィスもまたクスクス同様、10世紀に始まったサハラ縦断交易の際、北アフリカからやって来たベルベル人のムスリム商人が、西アフリカに持ち込んで原住民に伝えたものと思われる。

我が家のデュラムセモリナのクスクスサラダ 
インスタントのクスクスに、きゅうり、トマト、ピーマン、玉ねぎを入れ、マスタードを加えたフレンチドレッシング(サラダ油3+酢1+塩・胡椒少々)を混ぜるだけ。夏においしいアントレ。

《参考文献・Webサイト》

・『トウジンビエ Pearl Millet』瀬口 正晴  楠瀬 千春

・『Abundance in Millets』PM Narendra MODI, Falu, Gaurav Shah

・『ギネー発見征服誌』アズララ 長南実 訳 (岩波書店)

・『お菊さん』ピエル・ロチ 野上豊一郎訳 (岩波書店)

・『セネガル騎兵』ピエル・ロチ 渡辺一夫訳 (岩波書店)

・『Eleministe』今西 香有

・『モディ印首相の『雑穀ソング』グラミー賞 ノミネート』ニューデリーAFP=時事 時事通信ニュース 2023.11.13

・『Infopicks』

・『世界の食文化11 アフリカ』小川了 農文協

・『ニジェール探検行』マンゴ・パーク 森本哲郎・廣瀬裕子 訳  (河出書房新社)

・『Voyage à Tombouctou』 René Caillé (LD/La Découverte)

・『Dictionnaire wolof – français』KARTHALA

・『Pépinières et plantations forstières en Afrique tropical sèche』Institut sénégalais de recherches agricoles

『Arbres, arbustes et arbrisseaux nourriciers en Afrique occidental』Michel Baumer  ENDA

・『Plantes médicinales du sahel』Daniel Fortin, Modou Lô, Guy Maynart   ENDA

・『Plantes médicinales et soins en Afriaque』Pierre Saulnier  SEPIA

・『樹木大図説』

・『第5回セネガルにおけるミレットの食べ方』星野 未来 

・『アフリカに「思いやり」 セネガル料理一覧』iihanashi-africa

・『アフリカ自然学 短稈と長稈、2つのトウジンビエが併存する理由』宇野大介 古今書院

・『日本料理由来辞典』

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