セネガルサッカー 1/2

《決勝トーナメント》

対スウェーデン線

最初の対戦相手はスウェーデンだった。スウェーデンは、アルゼンチンやイングランドがそろった《死のF組》を1位で勝ち抜いてきた。まず、スウェーデンが先制点を挙げ、そのままペースを握るかと思われたが、セネガルが目を覚まし、左のディウフ、右のアンリ・カマラによるサイド攻撃で、果敢にゴールに向かった。前半37分には、FWのアンリ・カマラが胸トラップからドリブルで持ち上がり、2人のDFを置き去りにしゴールを決め同点とした。前半終了までは、セネガル優勢の時間が続いた。

後半になるとスウェーデンの猛攻に対し、セネガルは何人DFがいようともそこに個人技で挑んでいった。最後は、延長前半14分、FWパプ・チャウのヒールパスを受けたアンリ・カマラが左足でシュートし、ベスト8への扉をこじ開けた。セネガルは2対1で勝利した。

スタジアムでは、喜びのタムタムが鳴り響いた。

シュート数は21対12、ボール保持率でも54% 対46% 。スウェーデンを圧倒した。日本人が多いスタンドも、セネガルのプレーに何度もどよめいた。試合が進むにつれて、セネガルへの声援が大きくなった。

アンリ・カマラの劇的なゴールデンゴールでスウェーデンを破り、決勝トーナメント1回戦を突破した。アフリカ勢としては1990年のカメルーン以来のベスト8進出を決めた。

セネガル本国では、首都ダカールの独立広場には人々が次々と集まった。タクシーはクラクションを鳴らし、歩行者は国旗を振った。市民は、代表チームの応援歌を歌いながら、大統領官邸に向けて行進した。そして、アフリカサッカー史上初のベスト4への期待が大きく膨らんだ。

試合後、メツ監督は、「白熱した美しい試合だった。スウェーデンは我々の意表を突く先制ゴールを決めた。我々が同点に追いついた後の攻防は、生きた心地がしなかった。ゴールデンゴールは嬉しかった。スウェーデンがこういう形で負けるのはつらいことだと思う。強豪スウェーデンは予選トーナメントでアルゼンチンを葬り去り、イングランドも押しのけて1位で通過してきた。守備だけのチームではなく、16試合連続無敗を続けていた強靭なチームだった。17試合目で我々は打ち勝てた。この勝利は偶然ではない。チームの成長をほめたい。次の試合に向けて、これから十分休養しなければならない。新しいチームがこうして今、生まれようとしている。ベスト8で当たる日本かトルコは、まったく違った2チームだ。日本には親善試合で勝っているが、その時は日本はアウェーだった。今回は、相手のホームで対戦するということで、サポーターの声援を受けて強いだろう。どちらも一流の強靭なチームだ」と語った。(『Number Web 世界戦記2002サイト』より)

セネガルは欧州をしのぐ個人能力の高さを持つ。加えて、欧州並みの組織力を身につけてきた。あとはチームの成熟度を上げていけば、ワールドカップを手にする日もそう遠くはないかもしれない。

準々決勝では、トルコと戦うことになった。どちらの国が勝っても初のベスト4となる。

快進撃を続けるセネガルは、1990年大会でカメルーンがベスト8入りして以来、過去2大会で期待された続けたアフリカ勢初のベスト4入りに注目が集まった。

対トルコ戦

試合は、熱い戦いになることが予想された。しかし、そうはならなかった。試合は凡戦ともいえる内容だった。前半は互角に渡り合ったが、最後の詰めが甘く、なかなかシュートには至らない。トルコの攻撃に対し、セネガルのDFのダフが驚異的なスピードで戻り、ライン間際でクリアしてしまう。一方、セネガルも、ディウフとアンリ・カマラの2トップ、左のファディガを中心に攻撃を仕掛けていた。

しかし、後半になると、セネガルは完全に前線のディウフとアンリ・カマラ頼みの作戦となる。ところが、チャンスはおろか、ボールに触れることすら徐々に難しくなってくる。前線へ送るボールはすぐにカットされてしまい、挙句にはシュートもうてなくなってしまった。

何故かそれまでの奔放なセネガルサッカーが、影を潜めてしまった。延長PKを狙っているのかとおもうほど防戦一方だったが、最終ラインが踏ん張り、互いに0点のまま延長となった。

延長戦に入った前半4分。トルコは右サイドを突破したウミト・ダバラが中央へ長いクロスを送った。このボールに、ゴール前に走りこんだイルハンがダイレクトで右足を振り抜き、ついにゴールネットを揺らした。鮮やかな延長ゴールデンゴールを決められ、セネガルは敗退した。

今大会のセネガルの快進撃はここまで。彼らはしばらくあ然とピッチ上に立ち尽くしていた。

セネガル代表は対スウェーデン戦の時よりも明らかに調子が悪く、ベストを尽くし切った試合ではなかった。後半には、セネガルのDF陣に疲れが見え始め、前線は完全に孤立状態となった。

「疲れによるものだ。他に理由はない」とトラオレは言う。

「フィジカル的にハードだった。トルコはフリーのスペースを有効に活用した」

センターバックのジャータは振り返った。

ディウフやアンリ・カマラ、サリフ・ジャオといった選手たちも同じ言葉を繰り返す。

「別にセネガルが、技術や戦術でトルコに劣っていたとは思わない。後半動きが止まったのは、連戦の疲労が原因だ。特に、スウェーデン戦の消耗は大きかった」とディウフは言う。

だが、メツ監督の意見は違っていた。

「トルコは技術的に、われわれよりも優れていた。あれだけのボールを持てない時間が続くと苦しい。まだまだ学ぶべき点はたくさんあるよ。今回の冒険は、本当に素晴らしかった。われわれはフランスを破り、デンマークやウルグアイと対等に戦った。セネガルのような小国が、世界サッカーのヒエラルキーを覆した。そのことを私は誇りに思う」

ディウフとともに、リバプールへの移籍が決まっていたジャオもこう付け加えた。

「たしかに負けたのは残念。でもわれわれは精一杯やった。その達成感の方が強い。だから今夜も、これからみんなで騒ぐよ(笑)。勝とうが負けようが、自然体を貫くのがセネガルのいいところだからね。これからも人生は続いていくわけだし」

最後にトラオレが締めくくった。

「僕らのチームは、ヨーロッパの厳格さとアフリカの自由奔放さとのバランスが最高の形

で取れている。アフリカサッカーの可能性を世界に示せたと思う」

それは、新世紀のサッカーの可能性でもあった。

こうして、セネガル代表のベスト4への夢は破れ、日韓ワールドカップは終わった。

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