セイニ・ガジャガ Seyni GADIAGA
1956年ダカールに生まれる。
芸術教育高等師範学校(ENSEA)卒業。
ENSEA教授
プラー族出身。
ガジャガはいつもニコニコ笑っていて、穏やかな話し方だった。
ダカールのフランス文化センターのスタッフの執務室の壁に、ガジャガの’’ Croyance bleue(青の信仰) ‘’という絵が掛かっていた。
筆者:作品のテーマを教えてください。
ガジャガ:私は作品の中で、「大地」を歌い、「女性」を歌っています。詩を大地に捧げるように絵を描きます。大地の力強さ。女性たちの美しさ。大地は、「食料」と「豊穣」のシンボル。女性は「子供」と「愛」のシンボルです。これらはすべて、「命」を与えます。
筆者:あなたは色の魔術師ですね。
ガジャガ:「大地」は、サハラ砂漠周辺の乾燥したサヘル地域を示しています。大地は喉が渇いていて水を飲みたいのです。黄土色、オレンジ色、黄色、褐色。自分の故郷の大地のように、自分の祖先の土地に埋もれた記憶の断片のように、それらの色をキャンバスに塗り込みます。大地は「命」です。
それと対比をなして、透明で澄み切った、湧きあがる水のように優しい青色があります。青色は光です。空と夜の青色、神話の青色。信じることは青色。青色とは女性です。女性は「命」です。そして、命は私にとって「絵画」です。
美術 42-2
筆者:一見、暗く閉ざされた世界のようで、見る者を寄せつけない印象がありますが。
ガジャガ:画面をゆっくりと、部分部分を丁寧に見てゆくと、一つ一つの対象が鮮明に浮かび上がってきます。そこに無限の広がりを感じ、キャンバスという無限の宇宙に引き込まれそうになると思います。
筆者:強い影響を受けた画家はいますか?
ガジャガ:ピカソやカンジンスキーです。抽象画を描くには大変なエネルギーが必要です。子供たちの絵を見たり、子供たちと話しをすると力が出てきます。
セネガルの日刊紙《ル・テモアンLe Témoin》のインタービュー (筆者訳):
ル・テモアン: セネガルの現代美術の状況はどうですか?
ガジャガ:楽観的に見ています。創造性の点からもアーティストの決断力の点からも、大変健全だと思います。アーティストたちは組織化し、共に協力し合っています。芸術家の家に集まったり、ビエンナーレに積極的に参加しています。
ル・テモアン: アーティストたち自身が乗り越えるべき点はありますか?
ガジャガ:創造力をもっと個性的にしなければならないと思います。自分独自の画法を見出すべきです。亜流が多すぎるような気がします。
ル・テモアン: 若いアーティストたちへのアドバイスはありますか?
ガジャガ:一部の若者たちは、現在美術界で行われていることに活力を与えていますが、真っ向から抗おうとしていないと思います。他の人がすでにやっていることを制作の糧にしているような気がします。そのままコピーする若者もいます。しかしそれは絶対にやってはいけないことです。若者たちに言いたいのは、手本となるものを持つことは良いことですが、そこから飛躍をしないとだめです。自分自身を表現するために自分だけの道を見つけることです。芸術というものは、他では見られない、アーティスト固有の、自然で、オリジナルな画風が求められるからです。
ル・テモアン: 廃材などをリユースすることをどう思いますか?
ガジャガ:ヨーロッパの多くの国々で見られる動きですね。美術の歴史を見ると、リユースは無料ではなかったのです。ある国々の国民は、画材の問題に直面したため、自然環境に戻らざるを得なくなり、美的価値の無かった材料を見直しています。《芸術を非神聖化する》ため、ゴミ箱や街頭で集めた材料を美術館に展示することは、《美》に対する背徳行為とみなされ、ひいては造形美術に対する挑戦と受け取られたりします。今、私たちの国でも、資金不足のアーティストたちは廃材のリユースを行っています。彼らは、資金問題、経済問題などに直面しています。生活上の問題から、廃材で作品を制作しているアーティストが多くいることは確かです。
ル・テモアン: 現在のアーティストたちの最大の問題は何ですか?
ガジャガ:アーティストたちの最大の問題は⦅時間⦆です。幸いな事に、私たちは時間を支配することが可能です。作品を制作することは時間の支配です。私たちは、時間に対し、人生に対し、何かを残すことができます。今、私自身が変わり、常に、進化をしなければならないと考えます。私は1つの作品が完了すると、すぐに他の作品のことを考えます。突然変異や時間の変化があるのは承知しています。私たちはその中に組み込まれているからです。作品を制作する時、私にとってそれは、進化であり、呼吸をすることです。
ル・テモアン: 造形美術家はどのようにして作品と意志が通じ合うのですか?
ガジャガ:感性によって作品と意志が通じ合うことができます。人間の本質は感性だからです。人間は感性を必要とします。人間らしくすること、自分自身の人間性の程度を感じることを必要とするのです。また、自分の内部の豊かさを感じたいのです。それ故に、人は芸術作品に向かい合うのです。芸術作品を前にして、意志の疎通や人間性などを感じるのです。人は皆、常に自分の審美眼を磨こうとしているのだと思います。
ル・テモアン: セネガルには現代美術館がありませんが、それは造形美術家たちにとって障害となっていますか?
ガジャガ:セネガルに現代美術館が無いのは大きな問題だと思います。私はアーティストたちの懸念を常に伝えてきました。1つの場所ですべての現代美術を鑑賞できることは素晴らしことだと思います。美術館というものは、その国の記憶です。若い世代の人たちは、美術作品について語りたいと思っていますが、その前に美術作品を鑑賞することができないのです。美術館が出来て、そこに行けば、発見があり、知識を蓄積し、評価の基準を養うことができます。基準が分からないと、人はどうして良いか分からないのです。
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