ミス・ジョンゴマ・コンテスト

背が高く、やせて、足が長く、小顔で、8頭身。

これは、欧米人が世界標準にした「美人の条件」です。

しかし、それは本当に私達人間の「美」なのでしょうか?

ギリシャ彫刻の女性の「美」がなぜ、数千年たった現在もいまだに「美」の基準として残っているのでしょうか?

人間が「最も美しい」と感じる黄金比(1:1.618)は絶対的なものなのでしょうか?

これら欧米がつくりあげた「女性の理想美」のスペックを、真っ向から否定する美女コンテストがセネガルにあります。

ミス・ジョンゴマ・コンテストです。

コンテストの候補者たちは、肥満体で、腰はずんどうで、ヒップは巨大。

しかし、セネガルの人達は、それを「『セネガル女性の伝統美』で、『美しい肥満』であり、『癒しのふくらみ』」と称賛しています。

セネガル人男性はどちらかと言うと、「グラマーな女性」が好みであるらしく、それに応えようと、太ってお尻が大きくなる薬《Gnay-wi》(ウォロフ語で「象」の意味)を飲んだり、強い食欲を引き起こし、日本の相撲取りのように2人分食べることができるようになる《Cha Ka Fache》というニジェールの薬を飲んだりする女性もいる。

セネガルに限らず、アフリカの女性は、結婚前はやせてスレンダーな体型をしているが、ほとんどの場合、結婚後、太ってしまうことが多いようです。

やせている妻を持つ夫は、妻に十分に食べさせられないほど金がない、生活力がないという不名誉なレッテルを貼られてしまうことがあります。

逆に、太っている妻を持つ男性は、妻を十分に食べさせ、妻を幸せにしている立派な夫と評価され、それが男の「甲斐性」だ、と称賛されます。

因みに、日本では、平安時代、「一重まぶた」で「切れ長の目」で「ミツバチのような体形」の女性が美人でした…..

【ミス・ジョンゴマ・コンテスト】熟女コンテスト

ジョンゴマ(Jongoma )とは、ウォロフ語で「美しい」「美女」という意味ではあるが、「ジョンゴマ・コンテスト」は、単なる「美女コンテスト」ではなく、どちらかと言うと「グラマーな熟女コンテスト」と言う意味合いに近い。

伝統的な服でおしゃれをし、装飾品を身に付けておめかしをした女性達ドリアンケ(Drianké)。そのドリアンケ達の中で、最もドリアンケな女性がミス・ジョンゴマである。

セネガルの作家、セム・ママ・ジョップSémou Mama Diopはドリアンケについて、その著『最後の審判を待ちながら』の中で、「体が彫刻的で、豊満で、成熟し、アフリカの国家元首の銀行口座のようにはちきれんばかりのお尻を持った女性」と、描写している。

(公式のウォロフ語辞典では、「ジョンガマJongama 」と表記されているが、一般的に「ジョンゴマ」と発音されているので、本ブログでも「ジョンゴマ」と表記する)

コンテストに抗議する宗教団体からの圧力を受け、コンテストは、何度か中止と再開をくり返してきた。

ミス・ジョンゴマ・コンテストは2次予選まであり、そこで選ばれた10人ほどのファイナリストが最終審査に進む。

微笑み、グラマー度、香り、魅力を基準に審査を行い、エレガンスと美しさとしとやかさを競う。

今までの参加者の年齢は、25歳~39歳。

「ミス」とは言っても、実際には参加者の中に、既婚者や、子供を持つシングル・マザーもいる。

このコンテストを主催する、モイーズ・アンブロワーズ・ゴミス Moïse Ambroise Gomisは、コートジボワールの《グラマー美女コンテスト アウラバAwoulaba》から着想を得たと言われている。

アウラバ

彼は、コンテストがイスラム教の教義に反するとして、イスラム原理主義者たちから首を狙われていた。

また、Jamraという団体から、「コンテストは悪魔的」として、最終審査のテレビ放映を止めるよう強く要求された。

当時の法務大臣でフェミニストであった、マメ・マジョール・ボーイMame Madior Boyeからも、「このようなコンテストは、セネガル人女性にとって名誉でも何でもない。個人的には、不快で、良いイメージとは思わない」と非難された。

多くのスポンサーが撤退し、開催が危ぶまれていた中、それを救ったのは、ガボンの億万長者の妻、アワ・ジョップAwa Diopだった。彼女は、養女の結婚式に何百億円を使ったり、セネガルのモスクや至る所で寄付をしている女性で、コンテストにも躊躇なく金銭的援助を行ったという。

さらに、初代のミス・ジョンゴマのンデラ・チャウNdéla Thiawがコンテストの保証人となって関係方面に奔走し働きかけた結果、観光省後援でどうにか開催にこぎつけた。

上述のモイーズ・アンブロワース・ゴミスは《Tract》紙のインタビューに次のように述べている:

「昨年度のコンテストに宗教界の責任者を招待したが、コンテストを見たその責任者は、『私が聞いている事と違っていた』と言っていた。このコンテストに参加している女性達は、決して露出狂の不道徳な人達ではありません。彼女達はプレゼンテーションの時、普段通りの服装をしているので、いやらしさは何もない質の良いコンテストになっています。それに《ジョンゴマ経済効果》と言って、ジョンゴマ・コンセプトに従って作られた製品の売り上げが増加しました。ジョンゴマ服地、ジョンゴマヘア、ジョンゴマ指輪が売れ、それに刺激されて、ブーブーやンドケットやタイ・バスの服装があっと言う間に洗練されていったのです」

モイーズ・アンブロワース・ゴミス

一方、ミス・ジョンゴマ・コンテストに対する意見は手厳しい。以下は街の人々の声:

・国民のほとんどがイスラム教徒であるこの国で、このようにわいせつなものを見せるのは、恥である。(警察官)

・何も意見はないです。私にとって関係ないですから。それって何ですか?(小学校教師)

・コンテストをテレビで放映することには反対です。結婚をして、子供もいる女性がこういう風に自分の体を見せびらかすのを見たくありません。(店員)

・無責任です。私達の宗教に合致しません。こんなことに時間を無駄にするなんて。(公務員)

・女性は若い時は、自分の身をさらすことが出来ますが、一度結婚したら、自由に振る舞うことはやめるべきです。私達はイスラム教徒の国にいるのですから、そういうところにデリケートでなければいけないと思います。(看護師)

・ミス・ジョンゴマ・コンテストは見直すべきだ。テレビで放映されていても僕は見ないね。このコンテストを主催しているヤツは金の事しか考えていないと思う。(会社員)

・コンテスト?何のことを言っているのか分かりません。まったく知らないです。仕事が忙しいですから。(医者)

・これをやっている人達はよほど暇なんだね。食べるものが無い人はこれを見てもお腹がいっぱいにならないしね。招待状をもらったこともないし。テレビで観たことしかないね。(タクシー運転手)

・良いことだと思います。よくテレビで観ますが、とても参考になります。美しいセネガル女性は、ふくよかでなければいけないと思います。(主婦)

・女性の弱点を利用し、男の喜びの道具にしている。(銀行員)

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