マドレーヌ諸島国立公園 (通称:ヘビ島)

岩場の急斜面を登るとアカハシネッタイチョウのコロニーがある。

アカハシネッタイチョウは、口ばしが赤く、羽の先端が縞模様、白く長い尾羽をもつ美しい鳥。優美に青空を舞っている。

ガラス絵『アカハシネッタイチョウ』作者不詳
(『Peinture sous verre du Sénégal』より転載』

岩の裂け目に巣を作り、親鳥は雛をかえす。人間が巣に近づいても怖がらない。

公園管理局はすべての巣を調査し番号をつけている。

アカハシネッタイチョウは、カメラを構えている筆者の近くを何度も通り過ぎ、とても愛嬌があり、人なつこかった。

アカハシネッタイチョウ

ネッタイチョウ目ネッタイチョウ科

学名:Phaeton aethereus

フランス名:Phaéton à bec rouge = Paille en queue

本ブログのトップ画面に使われている鳥のキャッチ画像は、筆者がマドレーヌ国立公園で撮ったアカハシネッタイチョウで、マドレーヌ諸島国立公園のシンボルにもなっている珍しい鳥。

学名の《ファエトンPhaeton》は、ギリシャ神話の太陽神アポロの子。父にねだって太陽の馬車に乗ったが、軌道を外れて危うく大地を焼き払いそうになったので、最高神ゼウスは、馬車に巨大な雷を落とした。馬車は砕け散り、川に落ちた。ファエトンはこの世に帰ることはなかった。

学名は、悠々と空を舞うアカハシネッタイチョウの姿を、馬車で大空を駆け巡るファエトンの姿に重ね合わせたものと思われる。

赤色のくちばしが青空に映え、真っ白い尾羽を上下に小刻みさせて優雅に進んでゆく姿は美しく、いつまで眺めていても飽きない。

筆者はアカハシネッタイチョウを見るのが好きで、この島を訪れる目的の一つは、アカハシネッタイチョウに会うためだった。

体長は約46~50cmで、成鳥の2本の白い中央尾羽(45~56cm)を含めた全長は約1mになる。

翼は開いた状態で約105cm、大部分が白く、上面に横縞があり、長い両翼の風切羽には黒斑がある。くちばしは、成鳥のみが赤色。足は黄色味を帯びる。メスもオスも同色だが、オスの方が尾羽がより長い。

鳴き方は、ドアをギーギーと開ける音に似ている。

尾の細い吹き流しは、体長と同じ長さがあり、水面下やトビウオを追って空中をジグザグ飛行する際の安定装置の役目をする。

主に10~20cmの小さな魚、特にトビウオやイカなどを食べる。トビウオの場合は、空中で捕らえることもできる。

ひな鳥のために捕らえた獲物を、他の鳥から狙われることがある。他の鳥から尾羽を捕まえられると、アカハシネッタイチョウはのどに蓄えていた獲物を海面に落としてしまうことがある。

求愛は主に空中。数羽が、切り裂くような鳴き声をあげながら、素早い羽ばたきで寄り添って飛び、尾羽を後ろ下方になびかせて長い滑空をする。

成鳥の頭や頸には、つがい相手や営巣場所をめぐる激しい戦いで受けた傷がよくついている。

営巣は通常、岩棚上か岩の割れ目。通常、一年に一個の卵を産むが、毎月産卵することもある。ただ、一羽のひなは平均3日に2回給餌され、孵化後12~13週間で離巣する。

繁殖に長期間かかかるため、毎年ではなく隔年に繁殖する。繁殖の際には、島にコロニーを形成する。巣は岩棚の上や岩の割れ目などにつくられる。岩穴にいる時は、体全体が黒く見える。これは外敵から襲われるのを防ぐための知恵である。

2月~3月頃、岩穴で雛をかえしているメスのアカハシネッタイチョウを見ることができる。

岩穴の中のアカハシネッタイチョウ

マドレーヌ諸島のアカハシネッタイチョウのコロニーには、20~25組のつがいが確認されていて、これは赤道以北の西アフリカの沿岸にしか見られない。

産卵期の時、親鳥は役割を分担する。一方がひなを守る間、もう一方が沖合で餌(6cm未満)を探し回る。獲物を見つけると、海抜40mの高さからまず水面に移動し、ダイビングをする。

アカハシネッタイチョウはマドレーヌ諸島に棲みついていて、渡り鳥ではない。

ダカールのヴェルデ岬、マドレーヌ諸島そしてアセンション島、にしか生息していない。

寿命は10年。

ライエーヌ教団の創始者マハディ・セイディナ・リマムライMahdi Seydina Limamoulayeの死後、後継者が決まらなかったが、息子、マンジョン・ライMandione Layeが、コリテKorité(イスラム教の断食最終日)のお祈りをしている最中に、アカハシネッタイチョウが肩に飛び乗ってきた。これにより、マンジョン・ライが後継者に決まったという。

アカハシネッタイチョウが後継者問題の解決に一役買ったというエピソードである。

ガラス絵 『Mandione Laye』作者不詳
(『Peinture sous verre du Sénégal』より転載)

また、黒と白の羽の模様が、この教団のマラブーたちの頭に巻かれているターバンに似ていることから、アカハシネッタイチョウはライエーヌ教団のシンボルとなっている。

ガラス絵 『Mandione Laye』作者不詳
(『Peinture sous verre du Sénégal』より転載)

白く長い尾羽は、結婚式の装飾として用いられている。

同じ仲間に、シラオネッタイチョウやアカオネッタイチョウがいる。

シラオネッタイチョウ
アカオネッタイチョウ

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