チェレ・ディンブ Cere dimb ディンブの実のクスクス
カオラック(Kaolack)州のシィヌ・サル―(Sine-Salou)地方の村の人達がよく食べる料理。
小粒の「チェレ」を使用する。
ディンブ(Dimb)と呼ばれる木(学名:Cordyla pinnata) の果肉を煮込んだソースと一緒に食べる。
ディンブの実は熟して落ちたものより、まだ若い木から直接採ったものが良いとされる。実が熟してしまうと、中に種ができ調理がしにくくなるとのこと。
乾季の終わりに実が成熟して地面に落ちるが、シィヌ・サルー地方の人たちは、これを取って蓄えておき、次の年の雨期に食べる。雨期の時は、畑作業が忙しく、10月まで収穫がないので現金収入が無く、ディンブの実を使ったチェレを頻繁に食べざるを得ないからである。
チェレ・ディンブを、カフリン(Kafferine)市の近くの村の、Falou N’diayeさんの家で作ってもらったが、彼によると、ディンブの実は肉の代わりに用いるので、「シィヌ・サローの肉」とか「貧乏人の肉」とか言っているという。
ディンブの実の甘いほろ苦さが、ソースの味とチェレの味にまろやかに溶け込んでいて、とてもおいしい。⦅セネガルの田舎の味⦆という感じ。
因みに、ディンブの木材はタムタムの胴や木彫に用いられる。
チェレ・ンブットゥ Cere mbëtt オオトカゲのクスクス
セネガル料理で唯一のゲテモノ料理。
小粒の「チェレ」を使用する。
セレール族の人達が好んで食べる。
セネガルの中部に位置するファティックFatick州ンジャイ・ンジャイ Ndiaye-Ndiy村の村人にお願いして、「トカゲのチェレ」を作ってもらった。
とかげは、仏名:Varan de terre (学名:varanus exanthematicus, VARANIDES)と言い、辞書では「オオトカゲ」と訳されている。
体長1mくらい。キノボリトカゲのように小さくはない。
とかげが住む畑に村人と一緒に行って、捕獲に立ち会った。
オオトカゲを捕獲し、皮をはぎ、塩をぬって、天日で2日ほど乾かす。半分乾き、半分腐った状態(セレール語で「ニャーク」と言う)にする。この状態で調理すると、匂いや味が良くなるとされる。
調理が行われている間、村の人々は次のような話題で盛り上がっていた:
・「オオトカゲは人を噛むと、目を閉じて絶対に口を開けようとしない。熱したものをオオトカゲの頭にのせると口をポカンと開ける」
・「オオトカゲを殺して皮をはいで日干しにするが、1日置いたほうがよりおいしくなる」
・「キャッサバと一緒に食べるとよりおいしい」
・「オオトカゲは雨期になるといっぱい草むらに出てくるので捕まえやすい。落花生が好物でそれを食べに外に出て来る。12月頃のオオトカゲは体が大きいが、あまり外に出てこないので、捕まえるのが難しい」
・「オオトカゲの舌べらを乾燥させ、杵で潰し、飼料に混ぜると、牛や羊が2頭生まれると言われている」
・「オオトカゲの頭を乾燥させ、種撒きをした畑に埋めると、その年は、雨が多い年となる」
・「オオトカゲので皮で作られるグリグリは高級品。セネガルの伝統打楽器のタマにも用いられる。皮1枚5.000FCFA(約1.000円)」
・「オオトカゲの頭を家の周りに埋めておくと、蛇が来てもそこを避け、人に噛みつかない。オオトカゲの頭がヘビから人間を守ってくれる」
・「ある木の根を乾燥させ粉にして、オオトカゲの口に詰め、口が開いたまま土に埋めると、その周りの住民はヘビに噛まれない」
・「女性がオオトカゲの手首を食べると、オオトカゲの手首のようにしなやかで、美しい手首を持った子供が生まれるというので、女性が好んで食べる」
・「羊飼いは、オオトカゲのうろこを取って、皮のまま焼きクスクスと一緒に食べる」
・「クスクスを食べた時に、背骨が口の中に入っていたら、天国に直行できると、セレール族の人たちの間で信じられている」
筆者の取材のため、オオトカゲ君は不本意ながらも天国に行った。
その大切な命を投げ棄ててくれたオオトカゲ君のためにも、筆者はしっかりと味わって食べた。
まず、おそるおそるチェレにオオトカゲを煮込んだソースを少しかけ、手で混ぜ、そして口の中にゆっくりと押し込んだ。
テレビ番組の食レポ風に言うと、「始めに、トマトソース味が口いっぱいに広がって、後からトカゲの味がジュワ~としっかりと追いかけて来て、あま~くて、さっぱりしている」というのは冗談で、筆者の感想は以下の通り:
⦅オオトカゲの肉は、臭みもなく、引き締まって、こりこりとしていた。食べ始めは、鶏肉またはウサギの肉のように淡泊な味だったが、徐々に羊の肉のような味がしてきて、口の中にその味が最後まで残っていた⦆
オオトカゲ君、ごめんなさい!そして、ありがとう!
「モノを食べること」は、「命をいただくこと」。
後日談:
筆者を車で連れて行ってくれたセネガル人ドライバーが、「とかげのチェレ」を作ってくれた家を今でも時々訪れるらしい。その時、決まって、家の人達が「とかげの日本人は元気か?」と笑いながら聞くと言う…(Www 筆者はいつのまにかトカゲになっている。😢涙)
チェレ・ジャッハル Cere jaxal 睡蓮のクスクス
睡蓮の実(胞子)を用いた、セネガルでも珍しいクスクス。(当方ブログ記事「チェレ・ジャッハル Cere Jaxal (睡蓮のクスクス)」参照)
トウジンビエの代わりに、ジャッハル(睡蓮の胞子)を使ったチェレ料理。
トウジンビエが無い時、睡蓮の胞子を用いたのが始まりとか。
元来は、サン・ルイ州Walo-Waloの人達の料理。昔は川魚しか入れず、野菜を入れなかった。香ばしい味がして大変おいしい。
プル族の黄色いバター油で田舎のバターと呼ばれるディウニョール(Diwu ñor)をかけて食べる。これは、クスクスを滑らかにするラーロの役目をする。
ラフー・チャーハーンLaxu caaxaan ビサップのクスクス
またはラーハ・チャ-ハーン Laax caaxaan
またはラフー・ビサップ Laxu bisaab
またはングルバーン Ngurbaan
トウジンビエの穀粒を杵で搗き、ふすまを除去してから蒸したクスクス「サンカルSanqal」を使用する。
ウォロフ族の人達はラフー・チャ-ハーン(Laxu Caaxaan)またラフー・ビサッブ(Laxu bisaab)と呼んでいる。
「Caaxaan」は「決まった順番が無く、自由な」という意味。
ビサップと呼ばれるローゼル【1】(ハイビスカスの一種)の白い咢(ガク)を入れるので、「ビサップのクスクス」とも言われている。
セレール族の伝統料理。セレール語で「ングルバーン Ngurbaan」と呼ばれている。
ングルバーンは「表面を食べる」という意味で、熱いうちに食べる食事を指す。
ビタミンが豊富に含まれた栄養価の高い食事であるとセレールの人達は自慢する。杵で潰した生の落花生(ゲルテ・ノフライGerte noflaay)をベースに肉を煮込み、チェレと共にいただく。
蒸し暑かった夏も終わりさわやかな気候の秋になると、農村のあちこちの道に赤色と白色のビッサプが咲き乱れる。その風景は何故か心が癒される。
牛肉または鶏肉、魚の干物【2】(ゲッジュGejj)や魚の燻製【3】(ケチャハKeccax)、杵で潰した生の落花生(Gerte noflaay )、玉ねぎ、ビサップBisaab(ローゼル)の白い咢(ガク)、ニエべñebbe(いんげん豆)、酸味のあるダカール【4】Daqaarなどを煮込んだソースにクスクスを混ぜた、言わば、「クスクス雑炊」。
学名:Tamarindus indica
ダカールは、タマリンドとも言われ、食品に添加する増粘剤として評価が高く、日本では、かっぱえびせんやとんかつソースなどに使われている。
セネガルの首都ダカールの名前は、この木の名前「ダカール」に由来するという説もある。
全体的に魚の干物のだしがよく取れていて、かつお節のような味が口の中に広がる。かつお節をごはんと煮込んだような味で、たくわんか何か漬物が欲しくなるような味。ちょっとピリ辛。白いニエべ(白いんげん)がおたふく豆のような感じ。ビッサプの咢(がく)のサクサクとした歯ごたえが心地よい。日本人好みの味と言える。
軽い食事なのでマラリアにかかった人や病人によく食べさせる。
中国の炒めご飯「チャーハーン」とは全く関係がない。
学名:Hibiscus sabdariffa