《公園内に生息している魚介類》
マドレーンヌ公園周辺の海は、魚介類の種類が多い。
これは、沖合に砂洲があり、海底が変化に富んでいること(岩礁ゾーンなど)に起因している。
特に、ハタやセミエビやウツボはこの岩礁で産卵している。
レブ―族の漁師達は、公園に指定される前は、ここに頻繁に来て漁を行っていた。
フエダイ
スズキ目フエダイ科
ウォロフ名:ヤーハYaax (本来はレブ―語)
学名:Lutjanus agennes
フランス名:Carpe rouge
セネガルからアンゴラまでの大西洋岸に沿って生息し、「アフリカのマダイ」と言われている。
口は頭部のやや下にあり、前に突き出て口笛を吹くように見える。フエダイの和名は、これに由来する。
商業的には、カルプ・ルージュCarpe rougeと呼ばれている。一部は、イギリスなどのヨーロッパに輸出されている。
夜、群れを成して又は単独でえさを捕らえる行動的な魚。
体長は100cmに達する。
寿命は20年を超えると言われている。
白身魚。
チェブジュンなどのごはん料理に用いたり、オーブン焼き、ファルシ(詰め物)、蒸し煮にする。
フエダイが使われるセネガル料理:赤チェブ・ジュン、チュー・ブレット、スープ・カンジャ、マフェ・ジュンなど。
スマガツオまたはタイセイヨウヤイト
ウォロフ名:ワラスWalass
学名:Euthynnus alletteratus
フランス名:Thonine
セネガルでは、一般的に「トンThon」と呼ばれているが、マグロではない。
和名の由来は、「横縞鰹」が「しまがつお」となり、「スマガツオ」に変化した。
小魚、甲殻類、軟体動物、幼虫、プランクトンなどを食べる。この魚を見つけるには、同じく幼虫や小さな魚を食べる海鳥のいるところを探せば良い。
逆に、イルカやメカジキやサメに捕食される。
メスは年間、1万個の卵を産む。
泳ぎが大変速い。その理由として、
1.体が流線型で魚雷のような形をしていて、力強く、くちばしのように尖った鼻面を持っている。
2.前部の背びれが溝の中に収納でき、横腹の上の方にある胸びれと、胸部に位置する腹びれが、泳いでいる間、体のくぼみの中に消えてしまう。
3.後部の背びれと尻びれの後ろに数個の小びれがある。
4.尾びれが大きく、大きく二股に分かれている。
5.うろこが少なく、胸のところに限られている。
体長は普通70cmほどであるが100cmに達することもある。
骨が少ないので肉団子にすることが多い。
白マグロThon blancは、チェブジュン、チェレ料理に用いる他、すり身の肉団子にする。黒マグロThon noirは、チェブジュン、チェレ料理に用いる他、すり身の肉団子、蒸し煮、ローストにする。
スマガツオが使われるセネガル料理:チェブ・ジュン、チェブ・ジャガ、スープ・カンジャ、マフェ・ジュン、ジャガ・ブレット、チェレ料理、すり身の肉団子、蒸し煮、ローストなど。
シートラウトまたはウミマス
サケ目サケ科タイセイヨウサケ属
学名:Salmo trutta trutta
フランス名:Truite de mer
海を回遊し、産卵の時のみ生まれ故郷の淡水域に戻ってくる。
川では肉食性。昆虫、甲殻類、軟体動物を食べる。海では小魚や大きな貝を食べる。
シートラウトはブラウントラウトの特殊な「生態型」で、ブラウントラウトが稚魚を産み、そのうちの幾つかが海に移動し、そこで成長してシートラウトになる。
シ―トラウトが使われるセネガル料理:チェブ・ジュン他。
オニカマスまたはバラクーダ
ウォロフ名:セウードゥSëdd、Seud, Seudole (本来はレブ―語)
学名:Sphyraena barracuda
フランス名:Baracuda
アフリカの魚市場では、「Brochet」(カマス)として売られていることがあるが、これは誤った呼び名である。メルルーサではない。
熱帯および温帯の海域の沿岸に棲む。
魚が新鮮な時は、横腹に金色の細い帯が見られる。
ある時期、毒性を持つことがある。
熱帯大西洋の沿岸性の魚。
泳ぎが上手く、恐ろしい捕食者である。貪欲で突然の攻撃性はよく知られている。小さなバラクーダは群生し、グループで行動をする。大きなバラクーダは単独行動をし、ダツなどの細く尖った魚やボラ、カツオなど旺盛な食欲を満たすものならすべてを狙う。
身は最高で、評価が高い。
夏の暑い時期に、河口付近でトロール漁や釣りで捕獲される。
釣り上げられると、釣り人に襲ってくるほど獰猛で、負傷者も出ている。
バラクーダが使われるセネガル料理:唐揚げ、蒸し煮、チェブ・ジュンなどのごはん料理、チェレ料理。
バデッシュ
写真:32-23A(8月16日撮影)
ウォロフ名:セタンタSétanta
学名:Mycteroperca rubra
フランス名:Badèche
ウォロフ名よりも、バデッシュというフランス名のほうがよく聞く。
ゴレ島のハタ(Epinephelus goreensis)とよく混同される。
はっきりとした大理石模様がまだらにあり、波状になっている。
典型的な西アフリカの魚で、セネガルの沿岸で多く見られる。
地中海、ブラジルの海岸、カリブ海にも棲息している。
バデッシュが使われるセネガル料理:チェブ・ジュン、チュー・ジュン。
ハタ
ウォロフ名:ドイDoy
学名:Epinephelus alexandrinus
フランス名:Mérou-badèche
この魚の学名を、Epinephelus goreensis(ゴレ島ハタ)と呼ぶこともあるが、間違いである。
チョフの一種。
体は長く、チョフに比べ押し潰された感じ。
体型は、バデシュに似ている。
熱帯および亜熱帯の沿岸性の魚。
海岸線の岩場の海底に棲息し、特に、ヴェルデ岬周辺に多い。普通80cmぐらいになるが、例外的に140cmに達することもある。魚を待ち伏せて食べる捕食者。ばねを利かして獲物に襲いかかり、大きな口に飲み込む。
潜在的な雌雄同体である。性の反転が起こり、魚はまずメスになり次にオスになる。あるいはその逆になる。
身は大変おいしい。
ドイが使われるセネガル料理:チェブ・ジュンなどのごはん料理の他、唐揚げ、蒸し煮にする。
クエ (福岡では、アラと呼ばれる)
ウォロフ名:チョフCoof、Thiof (本来はレブ―語)
スズキ目ハタ科
学名:Epinephelus aeneus
フランス名:Mérou bronzé
熱帯および亜熱帯の沿岸性の魚。「磯の王者」と呼ばれている。
魚を待ち伏せて食べる肉食の魚。ばねを利かして獲物に襲いかかり、大きな口に飲み込む。
潜在的な雌雄同体である。性の反転が起こり、魚はまずメスになり次にオスになる。あるいはその逆になる。
サカナ君によると、普通、クエは生まれた時はメスで、10年ほどかけて成長すると一部の体の大きいメスがオスに性転換する。クエの繁殖は、オス同士がなわばり争いをして、勝った方が複数のメスと結ばれる。(体の小さいオスは競争に負けてしまい、子孫を残せない)
体が小さいうちはメスとして卵を産み、大きくなったらオスに性転換した方がより多くの子孫を残すことができるからである。
身は脂がのって大変おいしい。
体長100cm、重さ12~13kgになることもある。
東地中海およびアンゴラまでの西アフリカ海岸沿岸の砂と泥の海底に棲息している。
寿命も長く、40年ほど生きた記録もある。
セネガルでは時として「偽ダラ」と呼ばれる。
因みに、Epinephelus esonueという種類は、体長230cm、体重175kgにもなり、アルマディやゴレ島、マドレーヌ島で捕獲されている。
大好物の魚は、アジ、サバ、イサキなど。イカやエビも食べる。サメは天敵。
日本では長崎でよく獲れるキロ1万円以上もする超高級魚。例えば、23kgのクエは30万円以上する。めったに釣れないので「まぼろしの魚」と言われている。
鍋料理にするのが一番おいしく、九州場所に来たお相撲さんたちは「クエ鍋」のちゃんこ鍋を堪能している。お相撲さんたちに大人気。
クエは透明感のある白身で、上品な味の刺身もおいしいが、うろこの唐揚げがおいしい。
湯通したクエの腸はコリコリして食べやすい。また、くちびるは鍋にすると、ぷるんぷるんとしたコラーゲンのかたまりとなり、しっかりと味がしみていておいしい。
クエはどの部分を食べてもおいしく、「鍋の王様」と呼ばれている。
セネガルでも、高貴(Noble)な魚とされ、セネガルの人達はブール・ゲッジュ(Buur géej=魚の王様)と呼んでいる。また、紳士的な男性のことを「チョフ」と形容する。
チョフが使われるセネガル料理:赤チェブ・ジュン、カルド、チュー、チュー・ブレット、チュー・ディウティール、ジャガ、ヤッサ・ジュン、オーブン焼き、ファルシ(詰め物)、蒸し煮にされる。
トビウオ
ダツ目トビウオ科
学名:Exocoetidae
ウォロフ名:Naaw naaw
フランス名:Poisson Volant
サルパン島やルニュ島付近にはトビウオが多く生息している。
アカハシネッタイチョウが好んで捕食する。
トビウオは、滑空中に急に海中に入る必要が生じた時には、急ブレーキをかけることもでき、また、空中で方向転換も可能である。
勢い余って漁船などに自ら飛び込むこともある。
トビウオが使われるセネガル料理:スープ・カンジャ。
ウミウツボ
学名:Muraena melanotis
ウォロフ名:シークSiik (本来はレブ―語)
フランス名:Murène à oreille noire
どう猛で、⦅海のギャング⦆と呼ばれる。
典型的な西アフリカ熱帯性の魚。ウナギの仲間。
海岸の岩場、防波堤や港湾施設の土砂の中に住家をつくっている。
食べる物は体の大きさによって変わり、若い時は甲殻類を好み、大人になると、夜間、貪欲に獲物を狙って魚を食べる。時として、死んだ魚も食べる。
体長は80cmぐらいであるが、例外的に140cmになることもある。
大変パワーがあり、水の外でも耐久力がある。
どう猛で、船のデッキの上でも噛みつきに来る。毒を持っているので咬まれないように注意すること。
夏の暑い季節に繁殖する。成長過程における幼虫時は月桂樹の葉の形をしている。
古代ローマでは最高食材で、ローマで養殖されるほど人気食材だった。
ローマの皇帝カエサルは、ウミウツボを6000匹集め、20万人の市民に無料でふるまったという。その理由は、元老院に対抗するため、市民の胃袋を掴むためだった。
古代ローマでは、「ガルム」という魚醤があり、ローマ人にとっては大事な調味料だった。ふつうはイワシで作られていたが、高級なガルムはウミウツボの内臓でできていた。
ウミウツボが使われるセネガル料理:唐揚、干物、塩漬け。
セミエビ
学名:Homarus sp.
フランス名:Cigale de mer
伊勢エビの仲間。
20年ほど前は、日本では、網にかかっても捨ていて、一匹400円ぐらいだった。
イセエビよりおいしい。値段はイセエビの1.5倍の約17.000円。
一般に、セネガル人にはセミエビを食べる習慣はない。ダカールのフランスレストランなどで、富裕層のセネガル人、外国人客によって食べられている。
伊勢エビ:
イセエビ科イセエビ属
学名:Palinurus elephas
フランス名:Langouste
天敵のタコから身を守ってもらうため、ウツボと一緒に生活するこがある。
ウツボと共に生活していることもある。これはイセエビが天敵のタコから守ってもらえるうえ、ウツボの方も捕食対象のタコがイセエビに釣られて自分から寄ってきてくれるという相互利益があるからである。
繁殖期には移動の際に他のイセエビの後をついていくため、列を形成する姿が見られるが、これは敵から身を守るための行動とみられる。最初は数匹だが数を増やしていき、1週間寝ずに60kmを移動することや、総勢60匹で列をなすこともある。敵に襲われると、最後尾のイセエビが犠牲になることが多いとされる。
一般に、セネガル人には伊勢エビを食べる習慣はない。ダカールのフランスレストランなどで、富裕層のセネガル人、外国人客によって食べられている。
ダカール在住の日本人は、新鮮な伊勢エビを刺身で食べている。
エボシ貝
エボシガイ科エボシガイ属
学名:Lepas anatifera
フランス名:Anatife
流木などの漂流物や船底に集団で付着して生活する。
小型のプランクトンを食べる。
Anatifeは、ラテン語で「鴨を産む」という意味。この名前は、中世ヨーロッパで、エボシ貝が「鴨の卵」であると信じられていたから。
亀の手
ミョウガカイ科カメノテ属
学名:Capitulum mitella
フランス名:Pied de bicheまたはPouce-pied
甲殻類
エボシ貝に似ている。
波のうねりに最もさらされている岩礁を好む。
見た目の形状が「亀の手」に似ていることから、この名が付いた。
殻が鋭いため、注意しないと岩礁海岸で手や足を怪我する原因になる。
フジツボ
学名:Balanomorpha
フランス名:Balane, Gland de mer
かつては、貝などと同じ軟体動物に分類されていたが、1829年、J.V.トンプソンにより、エビ・カニなどと同じ甲殻類に分類された。
フジツボが船底に不着すると、水流の抵抗の増加、船舶の重量の増加、エンジンの冷却水水路の効率低下などさまざまな悪影響を及ぼす。
コウイカ
コウイカ科コウイカ属
学名:Sepia esculenta
フランス名:Seiche
軟体動物。
体の中に硬い石灰質の甲羅を持つことから、「コウイカ」と呼ばれている。
コウイカを使用したセネガル料理はないが、日本人としては、刺身または天ぷらがおいしいと思う。
ウミウサギ
学名:Aplysioïde
フランス名:Lièvre de mer
雌雄同体の腹足軟体動物。甲殻類の「ウミウサギ」とは異なる。
体の前方にある「こぶ」がウサギの耳に似ていることから、この名前がついた。
体をくねらせながら移動する。外敵に襲われそうになったら、イカのように紫色のインクをインク腺放から放出し、液体の有毒な煙幕を張り、外敵の嗅覚に悪影響を及ぼしながら自己防衛をする。
ムラサキウニ
学名:Cidaris cidaris
ウォロフ名:ソフ・ソフォールSox Soxor
フランス名:Oursin tiare、Oursin aux épais piquant
一見すると黒いウニに思えるが、日にかざすと紫色になることから、ムラサキウニと言われている。
岩のくぼみに入り込むので、外側を向いている棘だけが長い。棘自体は骨で、殻とつながっている筋肉で、棘の一本一本を動かすことができる。
ウニの口は体の下の真ん中についていて、海藻を見つけると、そこに乗っかるようにして食べる。因みに、うんちを出す肛門は上についている。
2億年前に姿を現した。
古代ローマ帝国時代から食べられている伝統的な食べ物。
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