セネガル相撲

《女子相撲》Ekolomdj

2000年6月25日、イバ・マール・ジョップ競技場で女子相撲が開催された。

セネガルの南部、カザマンス地方のンロンプ(Mlomp)村など、ジョラ族の間で行われている女子相撲は、Kaasa伝統相撲と呼ばれている。収穫が終わった後、豊作を神様に感謝するために村祭りの一環として行われている。

かつて、女子相撲の開催を決めるのは王様だった。

女子相撲が行われているンロンプ村などでは、キリスト教徒やアニミズム(原始宗教)信奉者が多い。セネガル中部や北部のイスラム教徒の多い地方では、このような女性相撲は行われていない。

オオギヤシの枝を地面にたたきつけ、神様がくれた力にお礼の意を表す。
闘いの勝負がつかず、長引く場合は、他の女子がやって来て、その試合を引き分けにする。

試合前、女性力士達は普通の女の子のようにおしゃべりをしていた。

女性力士の一人が、「まわしをつけて闘技場に来れないことが一番困るわ」と言ってみんなと大笑いしていたが、いざ試合が始まると、真剣な顔つきになって闘った。

生体力学者のDjiby Seck教授は、「人間の自然な動きである相撲を行うのに必要な能力を持っているのは女性である」と言っている。

カナリア諸島にも、「ルーチャ・カナリア」という女子相撲がある。体重別で90秒の制限時間で行われている。

《エキュリ》Ecurie (Kourelou Bëre)  Wudd

かつて相撲は、村と村の間の真剣勝負だった。

そのため、村の中では多くの若者達が熱心に相撲の練習に励んでいた。

しかし、時が経つにつれ、村同士の試合が少なくなり、相撲を練習する時間も失われてゆくと、相撲の愛好家たちは同じ場所に集まって練習をし、「グループ」をつくるようになった。当初、セネガルには3つのグループ(グループ・ファス、グループ・セレール、グループ・ワロ)があったが、青年省の大臣だった、ラミンヌ・ジャック(Lamine Diack)は、「グループ」という呼称を止め、「エキュリ(Ecurie)」を使用するよう指示を出した。

セネガルの力士達が所属するエキュリ(Ecurie)は、日本の相撲部屋とは異なる。

日本の相撲部屋は、親方そして出身地が違う力士達が同じ屋根の下で寝食を共にし、自らの稽古場で稽古に励みながら、家族のような共同生活を営んでいるが、セネガルのエキュリは、基本的に同じ出身地、同じ種族の力士達が集まる⦅相撲クラブ⦆のことで、寝食を共にすることはなく、浜辺や小学校の運動場などで一緒に練習をする集団である。

(日本の力士達も江戸時代まで、お抱え大名の名誉のために闘っていたが、明治維新による幕府体制の崩壊により、大名の保護から離れると、力士は自分の出身地のために闘うようになる。今でも、力士が「○○出身」とアナウンスで紹介されるのは、昔の風習の名残である)

エキュリを「相撲部屋」と表現すると、上記のような日本の相撲部屋を想像してしまう可能性があるので、このブログでは、敢えて、そのまま「エキュリ」という言葉を使用することにする。(エキュリは元来、フランス語で、『馬を飼う厩舎』を意味する)

エキュリは、元チャンピオン力士の指導の下、引退した力士のOBたちによって運営・管理されている。試合がある時は、同じエキュリの力士たち同志で精神的な面や技術的な面で協力し合う。また、エキュリ内には、試合を盛り上げるサポーター・セクションがある。

試合で、他のエキュリに負けたエキュリは、その日はお通夜状態となると言われるほど、負ける事は不名誉であり、侮辱的なことであるとされる。

正確な数字は分からないが、セネガルには、力士が約715人いて、106のエキュリがあると言われている。

特に有名なエキュリは、エキュリ・セレール(Ecurie Sérère)とエキュリ・ファス(Ecurie Fass)である。

エキュリ・セレールには、シヌ地区やサルーム地区やプティット・コート地区に住むセレール族の力士が所属し、かつての《闘技場の王者》マンガⅡがリーダーを務めている。

マンガⅠやマンガⅡなど、セレール族の力士たちは常に、セネガル相撲界において特異な存在であった。セレール族の力士たちの主な出身地は、パルマラン(Palmarin)、ジョアール(Joal)、ファディウトゥ(Fadiouth)、シヌ・サルム(Sine Saluom)、チェス(Thiès)である。

これらの力士たちは、1950年代、1960年代、1970年代のチャンピオンたちを常に苦しめた。

エキュリ・ファスは、ムスタファ・ゲイ(Mustapha Guèye)の兄で、かつて《Fassの虎》と呼ばれたンバイ・ゲイによって、1969年、ダカールのファス地区に創設された。

ムスタファ・ゲイを肩に乗せるンバイ・ゲイ

トゥバブ・ジョール(Toubabou Dior)などの多くの力士がンバイ・ゲイを慕って集まって来た。彼は、そのような力士たちの将来を案じ、よりよく彼らを教育するためにエキュリ・ファスを開いたという。

ダカールの浜辺で練習をするトゥバブ・ジョール

エキュリ・ファスは、他のエキュリと違って、いろいろな種族の力士が所属しているのが特徴で、現在、ムスタファ・ゲイ(親しみを込めて『タファ・ゲイ』と呼ばれている)がリーダーとなってエキュリを取り纏めている。

エキュリ・ファスは、セネガル大統領旗争奪戦でチャンピオンになった、ザル・ロー(Zale Lô)など、才能ある力士を育てていることで有名である。

校庭で練習中のムスタファ・ゲイ
校庭で練習中のザル・ロー

練習場は、コロバン Ⅱのサクラ・ バジャン小学校の校庭で、約15人の力士がトレーニングに励んでいる。エキュリ・ファスは、無条件で力士の入会を許可し、養成費用は無料である。篤志家からの寄附を保管する金庫があるが、そこには、試合に勝った力士が賞金の1パーセントを支払うことになっていて、エキュリの維持管理費として使われている。

練習は早朝と夕方行われる。朝の5時から基礎運動を行い、夕方は16時~19時まで、筋肉トレーニング、ボクシング、柔道および実践の相撲稽古を行う。

マンガ・ドゥとチャンピオン戦で闘った、エキュリ・ンジャンブール(Ecurie Ndjambour)のリーダー、モル・ファダム(Mor Fadam)は、かつてグレコロマン・スタイルのセネガルチャンピオンで、最初はエキュリ・ファスに属していた。

ダカール郊外のピキンには、ンボロ相撲学校があり、この学校から、マンガⅡや、モル・ファデム、タイソンなど多くの力士が卒業している。

主なエキュリと代表的な力士は以下の通り:

ECURIE(相撲クラブ名)主な力士
Ecurie BaolBillam N’diaye
Ecurie Boule FaléTayson,
Ecurie Ecole de lute Balla GayeBalla Gaye 2
Ecurie FassMustapha Guèye,
Ecurie Haal PularBala Bèye 2
Ecurie Grand DakarPuy 2
Ecurie KayorDame Sédar
Ecurie M’bourBombardier
Ecurie MédinaToubabou Dior,
Ecurie MermozSerigne N’diaye
Ecurie N’DakaruCheik Bamba, Yékini,
Ecurie NdjambourMor Fadam
Ecurie Pencum NdakauZale Lô
Ecurie PikineFalaye Baldé, Pape Diop,
Ecurie PlateauGaindé,
Ecurie PulaaguMor Fadam N°2,
Ecurie SérèreManga
Ecurie Sine Saloum 
Ecurie SoubédioumIbrahima BA, Ngor Diouf
Ecurie Tay SingerEumeu Sène
Ecurie ThiaroyeRay Sugaar N°2, Ndiaga Ndoye
Ecurie WaloMohamed Aly, Aliou Sèye, Lac de Guière
  

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