《セネガル相撲の型・技》
NHK取材班と共にセネガルを訪れた花田勝治氏(初代若乃花)は、セネガルの伝統相撲を見て、次のような感想を述べている:
「ずいぶん日本の相撲と似とるねぇ。技なんかそっくりだもの、ねぇ…。決まり手が日本の相撲といっしょなんだな….」
「昔は日本もこういう相撲を取っておったんだと思うよ…」
セネガル相撲では土俵らしきものはあるが、韓国やスイスの相撲のように、外に出ても負けにならない。(土俵を出ると負けになるのは日本だけのルール)
従って、「押し出し」や「寄り切り」や「送り出し」や「打っちゃり」などの技はセネガル相撲にはない。あるのは、「下手投げ」「上手投げ」「突き落とし」「はたき込み」「小手投げ」などである。
【まわしの締め方】Nguimbe
日本のまわしのように、お尻を出す形ではなく、腰布でお尻を隠して腰に巻きつける。
ウォロフ族の力士は、長さ2m、幅1.25mの軽くて丈夫な布を用いる。
ジョラ族やソセ(Hal Pular)族やトゥクルール族の力士たちは、ダラダラ(Dalla dalla)と呼ばれる、手製の色彩あざやかな細いズボンまたは半ズボンをはく。
ダラダラは清い状態でなければならない。相撲の試合が開催されている期間は、まわしを穢さないようにするため、性交渉を避けなければならない。また、ダラダラは力士がつける前に、処女の女性が最初に付けなければならないとされている。
まわしに新しい布を使う時は、まず手でよく揉んで、擦って、柔らかくしてから使う。









代表的な攻撃技
攻撃技術や規則、儀式、実施形態、特徴は、各民族によって若干異なる。
【高い位置の構え】Garde haute

《殴り技を伴う相撲》で、相手と距離をおいた高い位置の構え。
この姿勢で主審が吹く試合開始のホイッスルを待つ。
【中腰の構え】Garde moyenne

《伝統的相撲》で、相手の攻撃から身を守る構え。
この姿勢で主審が吹く試合開始のホイッスルを待つ。
【低い位置の構え】Garde basse

《伝統的相撲》で、相手の足にとっさに攻撃をかけたり、相手の突然の攻撃から身を守る構え。
この姿勢で主審が吹く試合開始のホイッスルを待つ。
【前かがみの構え】Garde basse

《伝統的相撲》で、セレール族やWalo地域のウォルフ族の力士がよく行う構え。
ネコの四足歩行を思わせるような低い姿勢で、主審が吹く試合開始のホイッスルを待つ。
【探り合い・牽制】Lewto レウトウ

主審のホイッスルが鳴ると試合開始。
主にウォロフ族の力士は、両腕を上下に互い違いに振りながら、相手を牽制し、間合いを見計らう。

相手との距離、位置、相手の体の開き具合を観察し、ゆっくりと左右前後に円を描くように回り、攻撃やパンチを繰り出す機会をうかがう。
【探り合い・牽制2】

主に、セレール族の力士が行う。
しゃがみ込むような低い姿勢で牽制し合う。
猿がケンカをしているような感じ。
【組み合い】

主にジョラ族、トゥクルール族、フラドーのソセ族の力士が行う攻め方。
一般的に、まわしを摑むことは許されているが、ジョラ族の Kassa伝統相撲では禁止されている。
相手に飛び込んで、まわしを摑み、組み合う。
【攻撃・リニャンヌ】Rignane

ジョラ族、マンジャック族、プティト・コートのセ―レール族に特徴的な技。
ファラングの得意技。
タイソンはこの攻撃技でマンガⅡに勝った。

両足をタックルする攻撃
リニャンヌ(Rignane)+ポップ(Pop)+ジウル(Djieul)
相手の両手を広げ、素早く中に入り込む ⇒ 両手で相手の両足を抱え込む (リニャンヌ)⇒

⇒ 相手を抱え持ち上げる = ポップ
⇒ 相手を後ろ側に倒す =ジウル
【片足をつかむ攻撃】

相手の片足を抱え込む ⇒ 相手を抱え持ち上げる ⇒ 相手を後ろ側に倒す。
【正面攻撃】

マンディンカ族およびバラント族の得意技。
相手の両足を広げ、中に入り込む ⇒

⇒ 相手を抱え持ち上げる ⇒

⇒ 相手を後ろ側に倒す。
【側面攻撃】

横側から相手の足を掬い取り、持ち上げ地面に倒す。
【パッド】Pad

片足のかかとを強く払う。
柔道の小外刈りに似ている。
【リニャンヌへのカウンター攻撃】

足技への反撃 。
ガル・ガル(Gal-gal)またはクリケ(Kliket)+カッタルビ(Khatarbi)
リニャンヌを仕掛けられたら、まず横から腕をボディロックして建て直す⇒

足かけ(ガル・ガルまたはクリケ)
⇒素早く相手を制御し、まわしをつかみ足をかける(=ガル・ガルまたはクリケ)⇒

後ろに倒す(=カッタルビ)
⇒そのまま後ろに倒す(=カッタルビ)。⇒ これらの動作を素早く連続して行う。
ジョラ族はこの技を使うのが上手い。
ファラングの得意技でもある。
浴びせ倒しに似ている。
【手で足を攻撃】 ティラド(Tirad)

低く構え、まず相手の肩をボディロックし、反対側の手で相手の膝をブロックする⇒

⇒同じ側の足を横にずらす⇒ 相手のひじまたは肩をてこに、相手を回転させ地面に引き倒す(ティラド)
「外無双」に似ている。
【腰技】ンボット(M’bote)

ファラングやフォデ・ドゥスーバの得意技。
足を内側にし、反対の手を抑える ⇒ 肩の上または下からまわしを摑む⇒

⇒ 腰を貼り出し、腰をひねって相手を後ろに倒す。
上手投げに似ている。

足を外側に ⇒ 腰をひねって相手を倒す。豪快な技。
腰投げに似ている。
【チャッカバル】 (Tiakhaball)

ファラングやフォデ・ドゥスーバの得意技。
内側から足を開かせるようにして、大きく刈って相手を倒す。
柔道の大内刈りに似ている。
【ノディウ】 (Nodiou)

リニャンヌへの反撃。
フォデ・ドゥスーバの得意技。
前方へ相手のバランスをくずす ⇒

⇒相手の肩へ腕を組み、相手の膝または足を攻撃する ⇒

⇒ 相手の頭を地面につける。または、両ひざ+片手または頭を地面に付ける。
【ブッソルー】Boussolou

主にジョラ族およびソセ族の力士が行う技。
相手のまわしを両手でつかむ ⇒相手の腕とひざを持ち上げる ⇒

⇒ うしろに倒す
頭から落ちると大変危険な技。
【タック】Tack

相手のまわしの周りを輪にしてつかみ、つり上げる⇒

⇒ボディロックし、相手を持ち上げ、背中または脇から落とす。
「つり落とし」に似ている。
【フィレ】Filé

相手の片足または両足に攻撃する前の準備の動作。
相手の反対側の手を引き寄せる。

側面からのボディロック。
【ウェイレール】Weyeler

フィレ+ウォルドンブ(Wordombe)の連続技。
ファラングの得意技。
日本の相撲の「送り掛け」に似ている。
相手の反対側の手を引き寄せる ⇒

⇒ 足をふんばって、後ろからボディロックする⇒

⇒ 地面におし倒す (ウォルドンブ)
【ハル・ンゲピンヌ】Har Nguépine

リニャンヌへの反撃技のひとつ。
相手の腹部に潜り込む⇒

⇒相手を持ち上げる⇒

⇒地面に倒す大技。
ハル・ンゲピンヌの技終了
日本の相撲の「鐘木反り(しゅもくぞり)」に似ている。
【ソル】Soll

肩の攻撃
片手を相手の脇の下から通し、片方の肩をつかむ⇒

⇒肩の下から両手を輪にしてボディロックする⇒

⇒相手を持ち上げ、ボディロックする⇒

⇒脇の下から相手を持ち上げる ⇒しなやかに体を曲げ、浴びせ倒しにする。
【ンボック】M’Bokh

相手のリニャンヌの動作に対して、頭と肩をブロックする。
(上から見た動作)

頭と肩をブロックする
(下から見た動作)
【フィルフィレ】Firfirer

まわしを両手でつかむ ⇒

⇒1回または数回、体を回転させ相手を地面に落とす。
【テック】Tekh

手で相手の片足の足首をつかむ。(幾つかのヴァリエーションがある:足の外側、足の内側)
日本の相撲の「外たすき反り」に似ている。

⇒手で相手の足の内側をつかむ⇒

⇒つかんだ足をもちあげる⇒

⇒反対の手で相手の上半身を押し、 前方または後方に相手を地面に倒す。
【コット】Kott

ソーセ族の力士が得意とする技。
ボディロックしながら、相手の足を外側からひっかける。

相手の足を内側からひっかける⇒

⇒まわしをつかみ相手を倒す。
【プンク】Penk

ンボットのヴァリエーション。
トゥクルール族やプル族の力士がよく行うアクロバティックな技。
地面に片手をついて腰を張り出す。

足は内側。
【ファルカット】Farkhatt

リニャンヌのカウンター攻撃。
主に⦅伝統相撲⦆で見られる倒し技。
地面に直接倒す。
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