《CNG (セネガル相撲管理委員会)の設立》
1959年に「セネガル相撲連盟」が設立されたが、機能しなかった。
1990年8月、当時の青年・スポーツ大臣、Abdoulaye Makhtar Diopは、CNG (セネガル相撲管理委員会 Comité Nationale de Gestion )の設立と、相撲界の改革を提唱した。
1994年3月、「相撲連盟」が新しく設立されるまで、暫定的な組織としてCNG が設立され、改革が実行された。
この改革により、セネガル相撲界は大きな一歩を踏み出した。
改革の目的は二つあり、相撲界を健全化すること、そして、力士および相撲界の地位を向上させることにあった。
CNGの設立以前は、相撲大会は、プロモーターと力士の間でサインされた簡単な契約書に基づき開催されていた。
プロモーターは、準備金として契約金の50%を試合前に力士に支払い、残りの50%は、試合終了後の2日目にマネージャーを通して支払わなければならなかった。
しかしながら、この残りの金額が、力士たちに支払われることはほとんどなかった。
プロモーターが力士たちのマネージャーに支払っても、それが力士たちに支払われなかったり、時として、プロモーター自身が、「相撲の開催は赤字なので、ファイトマネーの残金を力士に払うことができない」と言ったり、「経理と連絡が取れない」とか、「銀行担当者が病気」とか言い訳をして残額を支払わないことがあった。
このため、CNGは、この問題の解決に取り組み、力士たちが相撲で確実に生活できるよう、プロモーターと力士が遵守すべき下記の事項を規定した「契約条件書」を作成し、試合前に両者が署名することにした。
・契約書の形態
・力士に対する契約金の支払い方法
・闘技場への入場条件
・試合規則
上記条項が遵守されない場合は、罰金が科される。
プロモ―ターの義務
プロモーターは試合を開催する際、まず力士に契約金額を提示し、力士が合意したら、CNGが作成した条件書に従う。条件書には下記の条項が記されている:
「契約金の全額が、試合前に力士に支払わなければならない。契約書にサインした時点で、契約金の50%が力士に支払われるものとする。その後、5日以内に残りの金額がCNGに支払われ、試合後、CNGが力士に支払う。」
これにより、力士は、たとえ試合が赤字でも、試合の翌日にはファイトマネーの残金の全額を受け取ることができるようになった。
また、プロモーターは、試合の期日を遵守するため、保証金を積まなければならない。かつて、試合の期日が力士やプロモーターの勝手で変更されため、試合日を延期しないようにするためである。これについて、条件書は次のように記している:
「試合日は、力士の第一親等の両親が死亡した場合、力士が重傷を負った場合またはセネガル国家が明白な理由で、試合開催日に競技場を明け渡すことができない場合を除いて、延期してはならない」
上記の条件が、力士またはプロモーターによって守られない場合は、プロモーターは保証金が留保され、力士は残金の一部の支払いが凍結されるなどの制裁が科される。
力士の義務
CNGの設立以前は、試合規則が確立していなかったため、試合は無秩序状態に近かった。実際、闘いのルールは明確に規定されていなく、サポーターやファンもあいまいな判定にうんざりしていた。また、力士のサポーターが土俵に乱入し、試合がなかなか開始できないこともあった。
このため、CNGは「契約条件書」の中で下記の事項を規定している:
・力士は、多くて25人までの従者またはサポーターを従えて闘技場内に入場する。
・審判の最初のホイッスルが鳴ったら、闘技場内で従者は3人になり、次に闘いの開始を知らせるホイッスルがなったら、土俵から適切な場所に離れているトレーナー1人だけが残るものとする。
上記の条件が、力士またはプロモーターによって守られない場合は、プロモーターは保証金が留保され、力士は残金の一部の支払いを凍結するなどの制裁が科される。
改革により、力士たちは、プロモーターと不信な関係で繋がっていた古い慣習と決別することができた。
CNGの任期は、最初1994年3月~1997年12月だったが、その後、2年間延長された後、現在に至っている。当初の予定だった、新しい相撲連盟が設立されることはなかった。
《殴り技を伴う相撲のルール》
ルールが確立される前の、《殴り技を伴う相撲》の状況
・《殴り技を伴う相撲》は「野蛮なスポーツ」と言われていた。
・すべての攻撃が許されていて、平手うち、噛むこと、目の中にコショウを投げつける、性器への攻撃など、何でもありで、力士は危険にさらされていた。
・爪に唐辛子の粉を詰めておき、試合開始のホイッスルが鳴ると同時に、爪を相手の顔の前でぶらぶらさせる力士もいた。
・力士が、相手の足元にわざと卵を投げつけて割ったりすると、両方の力士の従者たちがなだれ込み乱闘になった。
・油脂を体中に塗って戦うと、相手が滑って倒れることが頻繁に起きた。(古代ギリシャでは、身を清める意味で体にオイルを塗っていた)
・《殴り技を伴う相撲》は、ボクシングのようにグローブを付けずに、素手でパンチを与えるため、怪我人がでることが度々あった。そのため、けがをしたひいきの力士を救うため、サポーターが闘技場内で乱闘騒ぎを起こしたこともあった。
このような状況を改善するため、CNGの前身であるCACLAF(殴り技を伴うセネガル相撲管理・監督委員会)は『一般規則』を作成し、ルールを詳細に規定した。
そのうち興味深い条項を紹介する:
第1条:《殴り技を伴うセネガル相撲》は、アフリカの伝統相撲とイギリスのボクシングの融合である。
第3条:いかなる《殴り技を伴う相撲》も、CACLAFおよびその地域の代表者の許可なくして、国内における試合を開催してはならない。
第4条:《殴り技を伴う相撲》は、必要なライセンスを取得している力士にのみ限られる。
第5条:《殴り技を伴う相撲》のライセンスを取得するには下記の条件が必要となる:
-申請書の提出
-18歳以上であること
-CACLAFによって認可された医者による適正診断書の取得
-保険の加入
-CACLAFが承認した特例を除き、スポーツ団体に所属していること
第13条:バク、ダンス、歌は、相撲競技の文化的一面を構成し、《殴り技を伴う相撲》試合のプログラムに義務的に組み込まなければならない。
第31条:《殴り技を伴う相撲》の格闘時間は、合計45分とし、15分間3回戦で行われ、1回戦ごとに5分の休憩を取る。⇒このルールは改訂され、10分間2回戦となった。
力士は、手、足、上半身裸で闘う。
第37条:相手に対しいかなる物も投げつけたり、まき散らす事を禁じる。また、以下の事項も禁じる:
-性器を攻撃する
-目つぶしを投げる
-地面に倒れた相手にさらなる攻撃を加える
-油脂の使用
-指をねじる
-咬む
-パワー・ネックレス
-足蹴り
-膝蹴り
-頭突き
第42条:試合は、主審1人と副審2人で構成される。
主審と副審は審判中央委員会より任命される。主審と副審は力士およびマネージャーから拒絶できない。
第45条:主審の判定は、勝者の手を揚げたり、状況によっては、手による明確な動作で勝者を示すなど、観客に対し、明白な方法で示されなければならない。
第47条:試合開始を告げる前に、主審は下記の事項を行わなければならない:
-力士のまわしのチェック。
-力士の体に油脂や粘性の物質が塗られていないかチェックする。
-力士がスタンバイの状態か確認する。
-関係者以外の人間が周りにいないか確認する。
第50条:警告は力士に口頭で行われる。
1試合に3回警告を受けた力士は懲罰を受ける。
第52条:ルールに則った攻撃を受けて負傷した力士は、負けとみなされる。
防御のために負傷した場合、攻撃した力士は失格となり、懲罰の対象となる。
第54条:主審は下記の場合、その結果に対して批判されることなく、試合を終了することができる:
-観客が試合会場に乱入し、試合続行が不可能な場合。
-審判、力士、試合関係者の安全が、投石や乱闘により脅かされた場合。
-不可抗力の場合。
土俵のサイズ
公式試合の土俵の直径は9m。(因みに、日本の土俵の直径は4.55m。一辺が6.7mの正方形)

力士の定年
力士の定年は、かつては45歳であったが、2020年に48歳に改正された。日本の力士の場合は、定年はなく引退は本人次第らしい。因みに、サンバ・ジャウという力士は60歳まで現役で活躍した。
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